タイヤとホイールの説明

転がり抵抗

転がり抵抗要素

転がり抵抗とは?

転がり抵抗とはタイヤが転がる時に進行方向とは逆向きに生ずる抵抗力の総和を指します。主な抵抗力はタイヤの変形によるエネルギー損失と空気抵抗です。タイヤと路面との間に発生する摩擦も、わずかですが抵抗力となります。

抵抗力の一番の要因はタイヤの変形によるもので、タイヤが路面に接地し、たわみ続ける事(繰り返し変形)によりゴムの内部でエネルギー損失が発生します。

  1. タイヤは回転していますので、路面に接地する瞬間(踏み込み時)にタイヤのゴムが路面の微小な凹凸に叩き込まれます。
  2. 回転力により後方に引き延ばされ、ほんのわずかに引きちぎれながら前方に蹴り出しを行います。この蹴り出し力が推進時のグリップ力です。
  3. 引き延ばされたゴムが回転方向に戻る時(変形から元の形に戻る時)にエネルギーを消費します。このエネルギー消費が抵抗力です。

繰り返し変形によるエネルギーの消費(損失)は、ゴムの分子が伸びる事により発生する熱【分子振動による発熱】です。

分子振動による発熱

簡単な実験でゴムの発熱を体感する事が出来ます。風船を膨らませない状態で唇につけ、そのままの状態で左右に引き延ばすと唇に熱を感じます。この熱がゴムの分子振動による発熱です。引き延ばしをやめると分子振動が収まり熱の発生はなくなります。(やめた瞬間に熱が引きます!面白いので是非一度お試しください^-^)

分子間で発生する熱はタイヤが仕事している状態(駆動初期・制動時・コーナリング時)ではグリップ力として使用されています。しかし、グリップ力として使用されている以上に発生してしまう余分な熱はエネルギー損失として【転がり抵抗】の原因となってしまいます。

単純には発熱を抑える事が出来るゴムでタイヤを作れば転がり抵抗性能を高くする事が出来ますが、相反関係にあるウェットグリップ性能が低下してしまいます。現在ではグリップ力として使用される以上の余分な熱のみを抑制し、ウェットグリップを低下させないゴムが開発され、エコタイヤに使用されています。余分な熱の発生を制御する事により、エンジンから伝わるパワーロスが減り、結果として燃費が向上いたします。

転がり抵抗の少ないタイヤを装着すると、坂道の下りではほとんどアクセルを踏まずにタイヤが転がっていく事が実感できます!

タイヤの主要部材であるゴムは「粘弾性体」

ゴムによるエネルギー損失が起きる要因はゴムの性質が「粘弾性体」である為に引き起こされます。

専門用語の連続になりますが、転がり抵抗=ヒステリシスロス=Tanδ(タンジェントデルタ 粘性/弾性比)となります。Tanδは電気業界の方にはおなじみではないでしょうか。

また、粘弾性体はかなり難しく専門の学問となっています。更に興味のある方は【ヒステリシスロス】【貯蔵弾性率】【タンジェントデルタ】(クリックでGoogle検索ページが表示されます)で調べてみてください。

粘弾性体

パイクス・ピーク・インターナショナル・ヒルクライム

アメリカのコロラド州、ロッキー山脈の東端に位置する山がパイクス・ピーク。普段は観光道路として使われている全長およそ20kmのルート。標高2,800mの地点をスタートして4,301mの頂上を目指し、如何に速く駆け上がることが出来るかを競う競技がPPIHC(パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム クリックでヨコハマのPPIHCのページを開きます)です。150を超えるコーナー、上り勾配は平均7%(最大10%)、ところによってはガードレールが無い場所もあり非常に危険なレースだそうです。

ヨコハマタイヤは2009年より電気自動車でもパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムに参戦しています。チームヨコハマEVチャレンジ(クリックで別サイトを開きます)を掲げ、2011年にはオリジナルEVカーにプロトタイプ仕様のエコタイヤを装着して参戦し、電気自動車の最速記録を更新しました。更に2012年には市販用のブルーアースAを装着して参戦し、前年のタイムを更新する速さを見せました。

ヨコハマ ヒルクライム電気自動車

EV(電気自動車)のレースでは常に強力なグリップ力が発生するタイヤより必要な時にだけグリップするタイヤが必要となるそうです。市販用のブルーアースAや後継商品のブルーアースGT(クリックで別サイトを開きます)は電気自動車やハイブリッドカーにぴったりです!

シビアコンディションにおける燃費

転がり抵抗性能の優れたタイヤは、シビアコンディションにおける運転時の燃費にも有効です。シビアコンディションとはストップアンドゴーの多い市街地走行や、十分な暖気運転が出来ずに走行する状態を指します。

一定の速度を保てる高速道路や、下りの坂道が含まれる山道よりも、頻繁に【信号で止まる】【発進】を繰り返す市街地走行の方が燃費は悪化する傾向があります。また、自動車のエンジンはエンジンが充分に暖まっていない状態では、燃料の噴射が通常時よりも濃くなる仕組みになっているため、暖気をせずに走行すると、やはり燃費が悪くなる傾向があります。

最終的には運転の方法、走行する場所、エンジンの暖まり具合等により最終的な燃費は左右されますが、転がり抵抗性能の高いタイヤはどんな時でも必ず燃費貢献をもたらします!!